
概要
「教室という自己肯定感の得られない場にさらされて、もう学ぶことは自分を傷つけることなんだと諦め、投げ出した生徒たち」。
そんな生徒たちの実態を前に、私が仕掛けたのは「星新一ランド」という一見遊びのような単元でした。
問題集を順番にやるだけの、生徒に全くフィットしていない学びを捨て、一人ひとりが「自分だけの担当」を持つことで、教室に何が起きたのか?
同僚の先生が「感動して泣きそう」と語った、その熱量の正体に迫ります。
①【問い】
「これ、本当にこの子たちのためになってる?」——。
赴任した学校の「国語研究」という授業、ふたを開けてみれば、シラバスはただ問題集を順番に解いていくだけの内容でした。
生徒たちは興味関心をすっかり失って、自分たちに全然フィットしていない学びを、いわば「押し付けられている」状態だったんです。
学力に自信がなく、学校に来るだけで精一杯。
そんな彼らにとって、わからない授業に座り続けることは、もはや「自分を傷つけること」でしかありませんでした。
学ぶことから背を向けてしまった生徒たちを前に、私は「これじゃあ、生徒かわいそうだな」と、現状をガラッと変える決意をしたんです。
②【試行錯誤】
そこで構想したのが「星新一ランド」という単元です。
きっかけは、初任校で唯一手応えがあった星新一さんの「服を着たゾウ」という作品でした。
さらに、小学校の先生の「おはなしランド」という実践にヒントを得て、生徒がワクワクする「お話の国」を作ろうと思いつきました。
最初は生徒も「ポッカーン」としていましたね(笑)。
でも、仕掛けはここからです。
まず、星新一のショートショートの担当を1人1つ、完全にランダムで割り振りました。
長い話もあれば短い話もあります。
でも「自分だけがここを担当しているんだ」という責任感と、「他人のと比較されない」安心感を与えたかった。
さらに、スライドで紹介する際、「AさんとBさんの二人が掛け合いながらストーリーを説明する」という設定にしました。
これが実はミソで、内容をしっかり噛み砕いて理解していないと、この掛け合いは作れません。
生徒たちは「誰かに教えるために」自然と何度も何度も文章に立ち返り、読み深める「はめ」になったわけです。
③【気づき】
この単元を3クラス並行で進めたとき、クラスをまたいだ「スライド交流」を行いました。
同じ作品を担当している生徒同士が、「あの人はこんな風にしてる」「私ももっと頑張りたい」と、勝手に刺激し合い始めたんです。
そして、一緒に取り組んだ同僚の先生が、こう言ってくれました。
「先生、誰一人寝ていません。みんなシーンと夢中になって取り組んでいます。私たち、することがないです。感動して泣きそうです」。
あの、学ぶことに背を向け、傷ついていた生徒たちが、ひたむきに言葉と向き合っている。
ちょっとした仕掛けや、自分らしさを称える課題の設定で、生徒の主体性はこれほどまでに引き出せるんだと、私自身が一番驚かされました。
④【結び】
目の前の生徒たちが諦めているように見えたとしても、それは彼らが「自分を守るため」に背を向けているだけかもしれません。
「これならできそう」と思える低いハードルを用意すること、そして「あなたにしかできない担当」を任せること。
そんなささやかな工夫が、教室の空気を劇的に変えることがあります。
もし今、授業で悩んでいるなら、一度教科書を横に置いて、生徒と一緒に「ランド」を作ってみませんか?
生徒たちが幸せな学びを取り戻す瞬間に立ち会えるのは、教師にとって最高のギフトですから。
#国語教育 #単元構想 #星新一 #授業改善 #生徒の主体性



コメント