志望理由書は、あえて全部書かせない

✿ この記事のハイライト

総合型選抜の志望理由書を、どう書かせるか。
前編の「生徒の見つけ方と、本人の中に火をつける面談」に続き、後編では実際の書かせ方についてまとめました。

聞きどころは二つあります。
一つは、生徒の生育歴を根掘り葉掘り聞いて、材料を掘り起こす教員の対話です。
もう一つは、志望理由書をあえててんこ盛りにはしない、という少し逆説的な戦略です。

抜いた部分は、面接で必ず聞かれる。これは大当たりでした。
どちらも、私自身の体験から自信を持ってお伝えできる部分です。

1200でも1800でもいいから書いてきなさい

書き始める前に、まず志望校のアドミッションポリシーをしっかり調べさせます。

志望大学の卒業論文のテーマや、いらっしゃる教授の研究も調べさせ、受験会社が出している資料にも目を通します。

そのうえで、生徒自身の現在・過去・未来をレポート用紙に書かせて持ってこさせます。
今ならICTで処理するほうが添削も推敲もしやすく便利だと思いますが、当時はレポート用紙でした。

こうした材料集めの時間を、たっぷり取るようにしています。

最初の書かせ方にも工夫があります。
制限字数が600字なら、600字で書いてくると内容が薄くなってしまいます。

だから「1200でも1800でもいいから書いてきなさい」と言います。
すると生徒は、思いの丈を書いてきます。

それを読みながら、何を出して何を引っ込めるのか、もっと何を付け加えなければならないのか、生徒と対話しながらブラッシュアップしていきます。

生育歴を掘れば宝の山が出てくる

その対話の中で私が特に大事にしているのが、生徒の生育歴を根掘り葉掘り聞いて、材料を掘り起こすことです。

「小さい頃はどんな子だった?」と幼少期の性格を尋ねます。
小学校時代の思い出や面白かったこと、一生懸命頑張ってきたこと、学校以外でどんな体験をしてきたかも、どんどん聞いていきます。

すると、小学校時代に地方の新聞社で新聞レポーターをしていた、という生徒が出てきました。

お父さんともどもイギリス海軍のマニアで、トラファルガー海戦の話になると、銃や艦隊の指揮官のことまで非常にマニアックに話せる生徒もいました。
その生徒は放送部に所属していて、とても話せる生徒だったこともあり、非常に向いていました。

田舎が大好きで、祖父母のところへ帰省してはいろいろなお祭りや地方のイベントを手伝ってきた、それが趣味だという生徒もいました。

こうした話が、生育歴を掘るとザクザクと出てきます。
生徒自身はこうした体験を自分の強みだと自覚していないことが多く、先生に聞かれて初めて出てくることもよくよくありました。

生育歴を掘れば宝の山が出てくるような学校でした。
これは、総合学科というところのポテンシャルの高さを示していると思います。

ただ、その宝を実際に掘り起こして志望理由書の材料にするのは、根掘り葉掘り聞く先生の力だと思います。
志望理由書指導の要は、この教員の掘り起こし力にあると私は思っています。

ほとんど営業みたいなものなんですけれども

掘り起こした材料は、次に大学が求める生徒像とすり合わせていきます。

進路担当や担任の先生は、大学説明会に行くことが多いですよね。
大学の先生の話っぷりから、こういう生徒が欲しいのだな、というのが言葉の中からわかることがよくあります。

ほとんど営業みたいなものなんですけれども、そこで得た感触が指導に生きてきます。

失敗しやすいのは、生徒が自分の書きたいことに一生懸命になって、相手が何を求めているかを見失ってしまうことです。
アドミッションポリシーを読んでいても、一生懸命になるあまり忘れてしまったり、どこかに行っちゃったりする。

だからこそ、生徒をきちっと基本に戻す対話を、何度も何度も重ねながら書かせていく必要があると思っています。

当時の生徒は部活動で鍛えられていて、自分の時間をマネジメントして書いて練り直し、何度ダメ出しをされても食らいついていくガッツがありました。
指導すればするほど、志望理由書がバージョンアップしていきました。

熱のある書きぶりの部分は絶対に手をつけない

ただし、先生が対話して手を入れすぎると、その生徒の持ち味がなくなってしまいます。
これが大きな問題になってきます。

私は手を入れすぎないようにして、その子らしさを大事にするように気をつけていました。

勢いのある、熱のある書きぶりの部分は、絶対に手をつけませんでした。

多少荒削りでも、文章が整っていなくても、ここは大事という部分には手をつけず、生徒の書きぶりと勢いに任せていました。

抜いた部分は面接で必ず聞かれる

もう一つの工夫は、全部を書こうとすると失敗するので、あえて少し抜くことです。
600字にすべてを詰め込もうとすると、書ききれなくなってしまいます。

そこで、大事なところは残しつつ、その生徒がよくしゃべれるところを短めに書く。
「ここは面接で語れるよね」と生徒と確認したうえで、その部分を短めにまとめました。

抜いた部分は、面接で必ず聞かれます。
これは大当たりでした。

大学の先生はよく読んでいるので、薄い記述を穴ではないかと、すかさず突っ込んできます。
そこで先生の想定を超える答えができるよう、その子の強みを最大限生かせる受け答えをあらかじめ用意しておくのです。

この戦略は、面接指導をしっかり行うことが大前提です。
その意味でも、志望理由書と面接はワンセットだと思います。

なお、たくさんの先生に見せすぎると混乱してしまうので、2、3人の先生に多面的にチェックしてもらって仕上げていました。

一律に何月からとは言えない

取りかかる時期は、一律に何月からとは言えませんでした。
総合型選抜にチャンスがある子は、7月から始めさせます。

一般入試とダブルスタンダードで行くべき生徒には、夏休みにしっかり勉強させてから9月から、もっと遅い生徒は10月からということもありました。

書き直しの回数も、早い生徒で3、4回、多い生徒では20回ほどと、個人差がありました。

時期が早くても遅くても、使える時間の多い少ないに合わせて生徒を指導するスキルと熟練度を、当時の教職員集団は備えていたように思います。
これが大きな強みだったなと、今でも思います。

この教職員集団の力量については、学校体制の話として改めて取り上げたいと考えています。

次回は、この抜いた部分を面接でどう生かすのかも含めて、話すことが苦手な生徒をどう面接に送り出すのかについてお伝えします。

※この記事はClaudeをアシスタントとして使用しました。
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