
今ここにいる自分を揺さぶる国語の授業を目指して〜「成果主義の社会」を教材から考える授業デザイン〜
https://youtu.be/OtsQ7MNJ9CY?si=LfkfJh0_yjIY5MrL
こんにちは、「今日も明日も授業道」、黒瀬直美です。
この番組では、中学校・高等学校の国語教育、働く女性の問題、そしてデジタル教育について、日々の授業の気づきや思いをゆるやかに配信しています。
今回は第201回、「今、ここにいる自分を揺さぶる国語の授業を目指して」と題してお届けします。
架空の「実用文」に本気で向き合えるのか?
少し前、SNSで全国学力状況調査の問題を目にしました。
令和7年4月に実施された中学3年生対象の国語問題。その出題内容に少しもやもやとした気持ちが残りました。
たとえば、小学生向けの展覧会の案内文の適切さを問う問題、プレゼンの内容を改善する設問、そして小説と手紙文。全体の4分の3が、いわゆる「実用文」でした。
もちろん、実社会で役立つ力を測るという意図はわかります。でも、これらの文章はあくまでテストのために作られた“架空の”文章。本気で読みたくなるか?と言われれば、正直、私はそう思えません。
もし私が中学3年生だったら、きっと心が動かされず、ワクワクすることもないでしょう。
本気で読める文章、本気で考える授業を
では、私自身はどんな国語の授業を目指しているのか。
今年も高校3年生の「論理国語」を担当しています。
2学期以降は受験対策が中心になるため、1学期は教科書教材をじっくり扱う方針にしました。
取り上げたのは、『「である」ことと「する」こと』。
昨年扱えなかった教材です。
加えて、より現代的な問題意識を持てるようにと、最新のテーマをもとにした教材も加えました。
成果主義のリアルを感じさせる仕掛け
ただ、教科書にいきなり入っても、生徒の興味はなかなか湧かない。
だからこそ「導入」が肝心だと考えました。
まず紹介したのは、ゴールドマンサックスで部長まで務めた田中圭さん。
超ハードな勤務をこなす一方で、体力も知力も限界まで高めてきた人物です。彼のストーリーは、生徒たちに「すること=成果を上げ続けること」の厳しさをリアルに感じさせてくれるはず。
もう一つは、クロニクルという音声配信で知った『弱さ考』の著者、井上慎平さん。彼は京都大学出身という輝かしい経歴を持ちながらも、成果主義の世界のなかで押しつぶされそうになったと語っています。
この2人を比較することで、「成果主義社会に生きるとはどういうことか」を、生徒たち自身の問題として引き寄せて考えさせようと考えました。
「であること」と「すること」の間で
導入後には、『弱さ考』の文章を丁寧に読み解かせました。
井上さんの文章は、高校生にもわかりやすく、自分ごととして受け止めやすい内容です。
そこから段階的に読みの難易度を上げていきます。
次に扱ったのは、本田由紀さんの『軋む社会』。
成果主義や実力主義のメリットとその「闇」に踏み込んだこの文章は、語彙も豊富で構成もわかりやすく、生徒の思考をより深めてくれると感じました。
そのあとで、ようやく教科書教材『であることとすること』に入っていく構成にしています。
「今ここにいる自分」が動く瞬間を
この授業づくりを通して目指しているのは、生徒たちが「今ここにいる自分自身」に目を向け、心が揺さぶられるような体験です。
学力調査にあるような、魂のこもっていない文章ではなく、本気で生きている人が書いた、読むに値する「血の通った」文章。
それを教材として、生徒たちと一緒に「この社会でどう生きるか」「何を大切にしていくか」を考えていきたいのです。
数値で測られ、評価される教育の中で、息苦しさを抱えている生徒は少なくありません。
その苦しみを見つめるまなざしを持ち、社会の構造を理解し、自分の立ち位置を問い直す。そのために、国語の授業ができることはきっとあるはずです。
この授業が、生徒の「今ここにいる自分」を少しでも揺さぶるきっかけになることを願って。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
それではまた、お会いしましょう。



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