

探究型学習と単元学習は実は同じ構造を持っている?世羅博昭先生の「目標の二重構造化論」をベースに、個別最適化や探究型授業が、既存の授業にちょっとした工夫を加えるだけで実現できることを、ロイロノート出版記念イベントでの登壇内容をもとにお伝えします。
皆さん、こんにちは。今日も明日も授業道、黒瀬直美です。
今回は、第334回として「探究型の授業構造と国語教育における目標の二重構造化論」というテーマでお届けします。
https://youtu.be/GLBJV_K4-LA?si=v11OhMO8LKMkhCgE
ロイロノート出版記念イベントでの登壇
2024年8月31日、東京の新渡戸文化中高等学校で開催された「ロイロ×個別最適化」という出版記念イベントに登壇してきました。私は探究型をテーマにした本を出版したこともあり、国語の教材を探究型にする取り組みについて実践報告を行いました。
このイベントの目的は、個別最適化や探究型という先進的な取り組みに関心はあるものの、難しそうで二の足を踏んでいる先生方に向けて、「実は今の授業にちょっとした工夫を加えるだけで、個別最適化や探究型は実現できる」ということを示すことでした。
探究型学習と単元学習のつながり

今回、特に意識したのは、探究型学習と、私がずっと取り組んできた大村はま先生の単元学習とのつながりを明示することでした。既存の授業にちょっとした工夫を加えるだけで探究型になっていくことを、参加者の皆さんにつかみ取ってもらうことが主眼です。
導入部分では、ワークや対話を通じて参加者とのコミュニケーションを図りながら進めていきました。
探究型学習の基本構造
探究型学習の基本は、皆さんご存知の通り、以下のサイクルを繰り返すことです。
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課題の設定
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情報の収集
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整理・分析
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まとめ・表現
このサイクルをくるくると回していくのが探究型学習なのですが、実は大村はま先生や、私が師事する世羅博昭先生がおっしゃっている単元学習も、これとほぼ同じ構造を持っているのです。
世羅博昭先生の「目標の二重構造化論」

世羅博昭先生は「目標の二重構造化論」を唱えていらっしゃいます。これは、生徒の学習目標と教師の指導目標は異なるという考え方です。私もこれを意識して授業づくりをしています。
(なお、この理論については、Podcastの第20回前後でも詳しくお話ししていますので、文章の最後にリンクを貼っておきます)
生徒の目標と教師の目標
探究型学習と単元学習、特に世羅博昭先生の目標の二重構造化論を関連づけて説明すると、次のようになります。
生徒の目標:
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「何々についてもっと理解したい、考えたい、追求したい、謎を解きたい」という問いを持つ
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主体的に情報を収集・整理・分析して解決に向かう
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まとめ・表現を通じて当初の課題を解決する
教師の指導目標:
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言葉の意味を理解させる
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文と文のつながりを意識して要旨をつかませる
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文章を通した認識の変革を促す
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探究を継続する態度を養う
重要なのは、生徒は「表現技巧を味わおう」とか「認識を変革しよう」ということを目標にするのではなく、「この謎を解き明かしたい」という問いを目標にして学習するということです。
生徒の学習目標と教師の指導目標は異なっており、二重構造になっているのです。
この二つを混同して、教師の指導目標を生徒の学習目標に掲げてしまっている実践がよく見られます。
ぜひ、ご自身の実践をチェックしてみてください。
実践例:「壁に残された伝言」を使った授業

今回のイベントでは、「壁に残された伝言」という教科書教材を使った実践例を紹介しました。
生徒自身の生活実態から課題を掘り起こす
まず、これまで受けてきた平和学習についてカードに書いて提出し、みんなで発表・共有します。そして、「なぜ印象に残ったり感動を覚えたりして、今も記憶に残っているのだろう」ということを考えさせます。
広島という土地柄、平和学習にはとても熱心に取り組んでいる生徒が多いのです。だからこそ、「なぜこんなにも平和について考える機会があって、今でも覚えているんだろう」「印象に残ったり感動を覚えたりするのはなぜだろう」という問いが生まれやすいのです。
この問いを追求する中で、「印象に残り、感動を人に与えるレポートとはどのようなものか」を考え、最終的には「自分でピースミニレポートを表現してみよう」という課題を設定しました。
生徒たちは、「火垂るの墓」を読んだ経験、アニメを見た経験、「この世界の片隅に」に出てきたお寺に実際に取材に行った経験など、さまざまな平和学習の記憶を出し合い、「なぜこんなに印象に残るのだろう」という気持ちを共有していきます。
ICTを活用した個別最適・共同的な学び
授業では以下のような活動を行いました。
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カードを分析して個別最適型の学習を実施
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導入の工夫を共有ノートで分析
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「壁に残された伝言」のチョークの文字が黒字に反転する「白黒反転のメカニズム」を図式化
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ロイロノートや他のICTアプリを活用し、共有と個別最適化、共同学習、インプットとアウトプットを繰り返す
そして最終的には、「印象に残る、あるいは感動を覚える平和学習にはどのような条件があるのか」をみんなで発表・共有した後、実際に自分でピースミニレポートを書くという流れになります。
知らず知らずのうちに身につく力
生徒は、「印象に残るピースミニレポート」「感動を与える平和のレポート」の条件を一生懸命追求します。その過程で、知らず知らずのうちに「壁に残された伝言」というテキストを読み、優れた表現を分析し、白黒反転のメカニズムを論理的に分析し、最後のまとめにある「無限の連鎖」という概念を通じて、自分たちの平和学習を再定義していきます。
教師の指導目標を意識することなく、自分たちの目標に向かって学習を進めていく中で、知らず知らずのうちに技量が身についていく。これが、目標の二重構造化論による単元学習の設計なのです。
先進的な取り組みは、実はもう先人がやっていた

イベントでは、今やっている授業にちょっとした変更を加え、ちょっとICTを取り入れれば、個別最適化や探究型になることを示しました。
今日は、かなり本格的な国語教育の話をしましたが、結局のところ、今流行している「個別最適学習」「協働的な学び」「自己調整学習」といった先進的な取り組みは、実は大村はま先生がずっと単元学習の中で実践されていたことなのです。
しっかりした授業をきちんと作っていさえすれば、自然と個別最適化や自由進度といった要素は含まれてきます。
特に自己調整学習については、学習の振り返りの際に「こうすればよかった」「ああすればよかった」「だから次はこうしよう」という気づきがあれば、それは教師の指導目標が達成できたかどうかの見取りにもなるのです。
温故知新の精神で

私が結局言いたいのは、今流行していると言われていることも、実はもう先人たちが実践していたということです。言葉を変えたり、見方を変えたり、レンズを変えたりすれば、自ずとつながりが見えてきます。
私としては、両方の視点をしっかり見ながら、つながりを考えながら、さまざまな人のものの見方・考え方、国語教育の切り取り方をお互いにディスカッションし、対話することによって、より授業づくりが深まっていくと考えています。
若手の先生方には、どんどん自分たちの授業づくりを進化させていってほしいと思います。しかし同時に、長年国語教育に携わってきた私の立場から言えば、「温故知新」―古きを温めて新しきを知るという姿勢も非常に大切だということを、今回のイベント登壇を通じてお伝えしたかったのです。
それでは、今回の配信はここまでです。読んでくださり、ありがとうございました。
参考までに
目標の二重構造化論について配信しています。
https://youtu.be/8JhW2csLtAc?si=a_AkBBqJ6AHoppuz
https://youtu.be/x9qtCRrnolI?si=vcLuw0SX9hqyi_9K
この記事はPodcastの音声データを元にObsidianとCursorで整形しました。
イラストはGeminiのStorybookを使用しています。


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